運転免許を更新すると言う父
先日、用事で実家に行った時に両親の部屋のカレンダーに一枚のハガキが貼り付けてありました。父宛てに届いた「認知機能検査」と書かれたハガキが某日の欄に丸印と共に貼り付けられていたのです。それは運転免許証更新時75歳以上の人に送られてくる免許証を更新できるかどうかのテストをするための検査のお知らせだそうです。
父の年齢は・・・85です・・・。
うそでしょ!!呆気にとられ、
「まだ更新する気なの?!それ正気?」
私は母に詰め寄りました。その場に父は居なかったのでちょっと強めに母に言いました。
「そうなの、検査だけ受けてだめなら返納するっていうから。でも、もう運転する事はほとんど無いから大丈夫。」
と、呑気な返事。
「ほとんどじゃなくて絶対乗っちゃあダメだよ!!!自主返納させなきゃ」
これだけ高齢者の悲惨な事故が問題となっているのにまだ免許を更新しようとするなんて…。高齢者の中には頑なに返納を拒む人がいると聞いた事がありますが、うちの父もその内の一人なのです。いかにも父らしいと思いましたが、これは困ったな・・・。
夫の父親も最後まで免許の更新にこだわっていました。脳梗塞の後遺症で半身に麻痺があるにもかかわらず
「なきゃ困る!病院に行けなくなる」
と言っていました。私は絶対反対でしたが、夫の兄(長男)が
「おやじは車が好きだから、取り上げたらかわいそう」
とか
「安全機能付きにすれば大丈夫」
と言って運転を許していました。それを聞いて私は「こいつらバカか!!!」と思いました。車の運転はたった一回の事故で自分だけでなく他人の人生をも狂わせかねないものであり、利己的な理由で乗り続けていい物ではないはずです。結局、義父は体が弱かったのでそのすぐ後に入院生活を余儀なくされ運転する事なく亡くなってしまいましたが、高齢者の運転に関して家族の中でも考え方に相違があるのは非常にやっかいです。特に男の人は車が好き、運転が好き、と言う人が多いでしょう。運転免許証を取り上げられたら一社会人として情けない気持ちになるのかもしれません。私だって自分の親から好きな物を取り上げる様な事をしたくはありません。でも、大切な親だからこそ乗って欲しくない。
池袋で暴走事故を起こした高齢者の事故は衝撃的でした。88才の杖をついた老人の顔や名前が報道され世間から猛バッシングを浴びせられ、日本中から憎しみの目で見られました。そのニュースを見た時、亡くなった方々の無念を想い私だって憤りを感じずにはいられませんでした。
「なんてジジイだ!」
それが本心です。あと数年で寿命が来るような人が、未来ある若い命を奪うなんて許せない。ニュースを見た誰もがそう思った事でしょう。
でも、もしも、もしも自分を育ててくれた親が、そんな加害者の立場になったらっと思うと胸を締め付けられる様な思いです。大切な親だからこそ、人生の終末期にそんな事件を起こしてしまわぬように、私達の世代が導いてあげなくてはならないと思います。私達にはまだ物事を正しく判断する力が残っているのですから。
父にはもう車には乗らないで欲しい事や、自主返納した近しい人の話を持ち出して
「もう、乗らない方がいいよ。どこかに行きたい時は乗せていってあげるから」
と父に話しました。複雑な顔をする父の顔を見るのは辛い物がありました。なんとなく直視できませんでした。それなりに威厳のある父でしたから・・・。
そして、その日はそれ以上その話はせずに帰りましたが、その日はずっとその事が頭から離れませんでした。
自主返納はただの形式です。その形式をとる事で高齢者のプライドが傷つくならその形にはこだわらなくてもいい。でも、とにかく運転の必要がない状況を私達子供が作ってあげなくてはいけない、と痛感しました。
これからはもっと頻繁に実家を訪れて、父や母の話し相手になってあげなくてはと痛感しました。育ててくれた父や母はもういつお迎えが来てもおかしくないような歳なんだから。
自主返納する事のメリットもある
運転免許証を返納する事で生活の足が奪われてしまうと感じている人もいるかもしれませんが、返納後はどこの自治体でも特典として公共交通機関の割引きが用意されています。他にも自治体ごとに色々な特典が用意されています。インズウェブのサイトに詳しい特典内容や各自治体のサービス内容へのリンクがあります。
インズウェブ
自動車保険の等級の引継ぎは条件が合えばぜひ使いたい制度
それからもう一つ、とても魅力的な制度があります。それは自動車保険の等級は同居の家族へ引継ぐ事が出来ると言う制度です。これは自主返納だからと言う訳ではなく、自動車保険の制度として元々からある制度です。この制度を利用して、免許を返納する事で自動車保険が不要になった高齢者の方が積み上げてきた自動車保険の等級を同居の家族へ引き継ぐ事が出来るのです。例えば、等級の高いおじいちゃんから、等級の低い若いお孫さんへ引き継いであげる事が出来るのです。それによってお孫さんの自動車保険の金額を大幅に抑える事が可能となります。おじいちゃんが最高等級であればお孫さんは最高等級の金額で自動車保険を契約できるのです!初めて保険契約をする人は通常6等級からスタートしますがもっと良い等級からスタートできれば保険料はグンと安くなります。
そんな風におじいちゃんが安全運転で積み上げてきたノンフリート等級で、お孫さんなどを喜ばせてあげられたら、なんの得も無く免許を取り上げられるような気持ちから、「役に立った!」と言う気持ちにさせてあげられるのではないのでしょうか。全員が使える訳ではありませんが、同居の家族がいる高齢者には有効な方法だと思います。
もし、等級の引継ぎをする場合は必ず保険会社に連絡をして手続きを取りましょう。
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